起業時に逆算思考は出来ないと思う訳

Newspicで話題になっているThe Startupの梅木雄平さんにコンサルを依頼した結果wwwwを読んでいて共感することがいくつかあったから書いておこうと思う。

 

それは逆算思考に関する違和感ついて。俺は、26歳で会社を辞めてから、色々と起業(スモールビジネス)の立ち上げに関わっていたわけだけど、その経験からして、逆算思考とは程遠い世界であると理解した。逆算思考が通用するのは、不確実性の低い世界、もしくは不確実性を排除できる力をもった人だけという感想だ。

 

俺は新卒で大手化学メーカーに務めたけど、そこは、まさに逆算思考そのものだった。でも、なんで逆算思考ができるのか?と考えると、その会社で取り扱っている商品を定期的に購入してくれるお客がいるからだ。それは、つまり、お客が買わざるを得ないような技術的優位性や価格優位性など広い意味でのブランド力があるから。そのブランド力によって、「来年の今頃は新製品が2つであるから、ベースの売上に、これだけの売上インパクトが追加されるので、これくらいの売上高と粗利が予想される」とはじめて考えることができる。

 

こういった安定的な環境を前提としない限り、厳密な意味での逆算思考なんかできやしない。仮に、それをスタートアップに求めるとするならば、それは嘘であると思うし、身の丈に合わない目標を掲げて事業を行うと、目の前にある肝心なことを忘れてしまい、むしろ、事業失敗のリスクは高まるような気がしている。

 

もちろん、「ああなりたい」「こうなりたい」という大きな意味でのビジョンは持つべきだし、その姿に近づいていく心理的な意味での逆算思考は持ってしかるべきだと思う。でも、どれだけの売り上げが立つのか、いくらの投資家EXITに導けるかだなんて分かるはずがないし、そんなことばかり考えて事業を始められるはずがない。そうなっては、みんな起業を断念してしまうに決まっている。

 

もちろん、売上予測を机上で考えることは簡単。たった顧客数×商品単価で決まるからだ。だけど、その顧客数が安定しないのがスモールビジネスだし、希望的観測を含む顧客数を前提としたキャッシュ計画をたてたら、それこそが最大のリスク。スモールビジネスにおいては、逆算思考というより、積み上げ的思考が大事になる気がする。つまり、目の前のお客さん、一番応援してくれるお客さんに優れたサービスを提供しようと悪戦苦闘する。その苦悶の積み上げが結果として、顧客数の安定をもたらすだろうと思う。

 

俺は従業員1名のところに2名目の社員として呼ばれて、まぁ、会社経営的な立ち位置で、ここ数年やってきた。それで、売上は小さいながらも当初の3倍になった。では、実際に俺達が歩んできたプロセスを事前に予測することができたかといったら、それは絶対出来なかった。

 

先ほども述べた通りだが、目の前のお客さんに優れたサービスを提供しようとアレコレ試行錯誤していく中で、新しいアイディアが生まれて、そのアイディアを実行し、少しずつ軌道修正していく。軌道修正に軌道修正を重ねた結果、当初、予想していた姿とはまったく異なるようなものになったというのが本音。でも、それは、俺が当初こうありたいなぁと思っていたものよりも素晴らしいものだったと思っている。

 

俺は、この経験から、世の中に出回っている逆算思考礼賛的な自己啓発本や人を、あまり好きになれない。もちろん、不確実性の低い環境に身を置く人にとっては、逆算思考は効果的だろうとは思う。

 

でも、世の中のほとんどの人が不確実性の高い環境に身を置いている。そんな中では、逆算思考よりも、一歩一歩前進していく思考(志向)性の方が適切ではないかと思っている。

 

そんなところ。